雪を割り、春を告げる「ふきのとう」|長野市場で見つけた、ほろ苦い生命力

信州の冬は長く、早朝の市場は身に染みる寒さが続く1月下旬。それでも、長野市場の競り場には、少しずつ「次の季節」が届き始めています。

今朝、私たち青木青果の目に留まったのは、春の使者「ふきのとう」でした。 本格的な旬は2月〜3月ですが、この時期のものは走り。 まだ数量は少ないものの、厳しい寒さに耐えてきた分、香りが最も凝縮されている時期でもあります。

■ 「春の皿には苦味を盛れ」

昔から「春の皿には苦味を盛れ」と言われます。
冬の間、濃い味や脂っこい料理が多くなりがちな食卓に、あえてほろ苦い山菜を取り入れることで、味覚と体を一度リセットする。そんな感覚的な知恵が、この言葉には詰まっています。

ふきのとうの苦味と香りは、ポリフェノールなどの植物由来成分によるもの。理屈で考えると難しく聞こえますが、要は「春の味は、少し苦いくらいがちょうどいい」ということ。実際、この香りを嗅ぐだけで、「あ、もうすぐ春だな」と感じる人も多いはずです。

■ ふきのとうは「半日」で別物になる

ふきのとうは、数ある山菜の中でも特に「鮮度が命」です。 採れたてのものは苦味がやさしく、香りも澄んでいますが、時間が経つにつれて酸化が進み、アクと苦味が急激に強くなっていきます。

これは細胞が壊れて成分が変化するため。 同じ場所で採れたものであっても、収穫から半日違うだけで、風味が全く別物になってしまうことも珍しくありません。

■ 青木青果が競り場で見ている「2つの点」

私たちが仕入れの際に必ず見るのは、次の2点です。

根元の切り口
白っぽさが残り、みずみずしいものほど新鮮です。

つぼみの締まり
花が開き始めるほど繊維質が増え、えぐみも強くなります。

逆に、つぼみがギュッと硬く閉じているものは、中にデンプン質を蓄えており、天ぷらにしたときのホクホク感がまったく違います。

■ 走りの時期だからこそ、シンプルに楽しむ

この時期のふきのとうは、まさに初物。
おすすめは、やはり天ぷら。油に入れた瞬間に立ち上がる香りは、もう「春そのもの」です。

細かく刻んで信州味噌と和えた「ふき味噌」も定番。苦味と発酵の組み合わせは、理屈抜きにご飯が進みます。

外はまだ寒さが残りますが、ふきのとうを一口食べると、「あぁ、もうすぐ春だな」と実感する。そんな季節の変わり目を、今年も市場からお届けしていきます。