まだ寒さの残る頃に届く、信州の「ゆき菜」という野菜

信州の冬は長く、早朝の市場は身に染みる寒さが続く1月下旬。
正直なところ、春はまだ先だなと感じる季節です。
それでも、長野市場の競り場を歩いていると、少しずつ「次の季節」の気配が届き始めているのが分かります。

今朝、競り場でゆき菜を見たとき、
「あぁ、今年もこの野菜が出てきたな」と、思わず足が止まりました。

この時期に姿を見せ始めるのが、信州の冬野菜「ゆき菜」。
派手さはありませんが、地元では昔から親しまれてきた、冬から春への端境期をつなぐ青菜です。


ゆき菜は、寒さを知っている野菜

ゆき菜は、寒さにさらされることで甘みが増す野菜です。
冷え込みの中で育つことで、葉の中に旨みを蓄え、えぐみが少なく、やさしい味わいになります。


冬の食卓にちょうどいい理由

冬の間は、どうしても味付けが濃くなりがち。
そんな時に、ゆき菜のやさしい苦味と青菜らしい香りは、食卓を少し軽くしてくれます。

おひたしや和え物、油揚げと一緒にさっと炒めるだけでも十分。
火を入れすぎず、歯切れを残すと、ゆき菜らしさがよく分かります。


信州では「おやき」にする野菜

信州では、ゆき菜はおやきの具としても昔から使われてきました。
刻んだゆき菜を油でさっと炒め、味噌や醤油で軽く味を付ける。
それを皮で包んで焼く、蒸す。

特別なことは何もしていませんが、
ゆき菜のやさしい苦味と、味噌のコクが合わさると、不思議と飽きのこない味になります。

いくつもあるおやきの中でも、ゆき菜のおやきにはついつい手が伸びてしまいます。

実際にこの時期は、お得意先のおやき屋さんからも、ゆき菜の注文が入り始めます。
昔から変わらず使われ続けている、信州らしい野菜のひとつです。


競り場で感じる、ゆき菜の今

ちなみに、競り場に並ぶゆき菜の量は、年々少しずつ減ってきています。
作り手の高齢化や、冬場の栽培管理の難しさもあり、以前のように当たり前に毎日並ぶ野菜ではなくなってきました。

それでも、この時期になると、昔からゆき菜を使ってきたおやき屋さんからの注文は途切れません。
量は減っても、必要とされ続けている野菜。
そんな存在になっているのが、今のゆき菜だと感じます。


春へ向かう途中の一皿として

ゆき菜は、「冬野菜」と「春野菜」のちょうど間にある存在。
まだ春ではありませんが、確実に季節は前へ進んでいます。

派手ではないけれど、暮らしの中でしっかり役割を持つ野菜。
今年もまた、この時期ならではのゆき菜が、競り場に並び始めています。